「過払い金」信用状の郵送期限が厳密な締切となり得るか?

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主文

本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人右田堯雄の上告理由第二点一について
所論は、要するに、被上告人が上告人A鋼業株式会社の依頼に基づいて、昭和五三年七月一〇日に発行した本件信用状につき、その受益者である訴外D銀行株式会社(以下「D銀行」という。)が、発行銀行である被上告人に対して本件信用状に基づく支払を請求するためには、その有効期限までに必要書類を被上告人の営業所に到達させなければならないのに、原判決が必要書類を有効期限内に発送すれば足りると解したのは、本件信用状の効力の解釈を誤った違法があるというのである。
思うに、有効期限(失効すべき期日)の記載はあるが、その時を定めるべき場所(有効期限に関する場所)の記載がないスタンドバイ信用状においては、その有効期限は、受益者が発行銀行に対して必要書類を発送すべき期限を意味し、必要書類に付された日時又はその発行銀行への到達日時からみて必要書類の発送が右期限内であると認められる場合には、発行銀行は、受益者が期限を遵守したものとして、その支払に応ずべきであると解するのが相当である。
けだし、右のような有効期限に関する場所の記載がないスタンドバイ信用状について、右期限をもって発行銀行に対して必要書類を呈示すべき期限の意味に解するときは、発行銀行と受益者たる銀行とが通常互いに遠隔地にあることに照らすと、受益者たる銀行をして書類送付に要する期間を見越して与信期間を短く設定することを余儀なくさせ、信用状の機能を弱め、ひいてはその開設を依頼した趣旨にも反する結果になるからである。
これを本件についてみるのに、原判決が適法に確定した事実関係は、次のとおりである。
(1) 上告会社は、被上告人との間で、昭和五三年七月六日、銀行取引約定及び商業信用状約定を締結し、「被上告人が上告会社の依頼によって開設した信用状に基づいて受益者に対し適法に信用状債務を履行したときは、上告会社が被上告人に対し右履行金額の補償に応ずる」、「発行依頼人が別途差し出す信用状発行依頼書の記載事項に基づいて信用状が発行され、信用状条件の変更についてもその依頼書の記載事項によって行われる」旨を約した(以下「本件約定」という。)。
(2) 同月一〇日、被上告人は、上告会社の依頼に基づき、受益者をD銀行、有効期限を同五四年一月七日(ただし、有効期限に関する場所の記載はない。)、限度額を米貨一五万ドル、支払条件として第一審判決別紙添付の本件信用状記載事項欄(2)記載の事項(英文)を記載した取消不能スタンドバイ信用状である本件信用状を発行し、そのころ、D銀行にその旨通知し、同銀行はこれを接受したが、右英文の記載の趣旨は「この信用状は、E会社がこのスタンドバイ信用状の下に実行された貴行の融資の返済を既に怠ったということを明記した貴行の署名入り声明書を二通添付した貴行の一覧払為替手形を当行宛振り出すことによって利用することができる」ということであった。
(3) その後、上告会社は、被上告人に対し、本件約定に基づき、六か月ごとに「保証信用状期限延長依頼書」を差し出して本件信用状の有効期限の変更を求め、被上告人は、その都度「取消不能保証信用状条件変更書」による条件変更の意思表示により本件信用状の有効期限を延長し、その最終期限が同五七年四月七日となった。
(4) 右同日、D銀行は、被上告人に対し、E会社が融資の返済を怠った旨の前記署名入り声明書二通を添付した一覧払為替手形を発送して米貨一五万ドルの支払を請求し、同月八日以降被上告人が右書類を受領した。
(5)翌五八年四月七日ころ、被上告人は、D銀行に対し、右請求に係る米貨一五万ドルを支払った。
以上、原審の確定した事実関係の下において、D銀行は、右有効期限内に必要書類を発送したことが明らかであるから、被上告人に対するD銀行の右支払請求は、期限を遵守して行われたものと解するのが相当であり、これと同旨の原審の判断は正当として是認することができる。
原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
その余の上告理由について
原審の適法に確定した事実関係の下において、所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。
論旨は、独自の見解に立って原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。
よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

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